犬の散歩でいつも通りかかる家の通りに面した窓際で、いつもおじいちゃんが木工細工を作っている。
その小さな部屋は、お城などの木工細工でぎっしりと埋め尽くされていて、
いつもいつもおじいちゃんは、何かしらの木工細工を作っているのだ。
じっと見るわけにもいかないので、通りすがりにさりげなく覗いているだけなので詳しくはわからないけど、色んな種類の木工細工を作っている様子。
そして、その家の玄関口にかかっている鳥かごには、
黄色い2匹のインコがいる。
いつ見てもその2匹はじっと向かい合って見つめ合っているので、
「仲良しでラブラブなインコだなあ」と、暖かい気持ちになる。
通りかかるたびにこの2匹のラブラブインコを見るのもひそかな楽しみだ。
さて。冬至の今日は、日の出の時刻が遅い。
いつもの朝の散歩の時間になってもまだ暗いせいか、
りつりんは目覚めが悪いようでグズグズしていたので、
明るくなってから散歩にいった。
そして、木工細工のおじいちゃんの家の前を通りかかると、
窓にはカーテンがかかっていた。
さすがに早朝なのでまだおじいちゃんは作業をしていないのだな。
そしていつもの通り、2匹のインコの様子を確認する。
今日も2匹はやはり向かい合っている。
「いつもラブラブだなあ。」
おじいちゃんがいないので、いつもよりじっくり2匹を見ることができた。
で、じっくり見ていると、ある異変に気が付いた。
1匹のインコの羽の色が不自然だ。
・・ていうか、1匹のインコは、作り物だ!
あれー。なんで?
で、もう1匹に目を移すと、
なんと、もう1匹のインコも、作り物だった!
「あれー?!もしかして、死んじゃったのかな・・?」
なぜか、先ずそう考えてしまった。
インコが死んでしまったけど、悲しいので、同じような人形を置いているのか、と。
おじいちゃんもいないので、
しばらく鳥かごを見つめ続けながら、思考を整理する。
いや。
もしかすると、最初からずっと、作り物だったのかもしれない。
そもそも、この家のおじいちゃんの趣味は、木工細工だ!
犬の散歩を始めてから2年以上。
少なくとも2年以上は、ずっとこの2匹のインコを本物だと思い続けていたので、
いまだにずっと作り物だったとは信じられないのだけれども。
しかしそういえば確かに見つめ合っている以外の状態であったことはなかったかもしれない。
信じられない気持ちで、夕方の散歩の時に改めて通りかかりがてら確かめてみたら、
やっぱりインコは作り物だった。
そして、おじいちゃんは、たくさんのコケシを並べて色付けをしているところだった。
おじいちゃんは趣味で木工細工を作っていると思っていたのだけど、
もしかしたら、これは仕事なのかもしれない。
このコケシの量と捌き方からして、趣味の作り方には見えない。
なんだか色んなことが急にきちんと見えてきた。
それでもいまだに前に見ていた2匹のインコは生きていたとしか思えないのだけど。
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