いろいろ予想外の緊急

へんてこえ日記


GW開始まであと2日の週明け月曜日。ちなみに昨日の夜は、キャンプの食料の買い出しに行った帰りに夕飯はモツ鍋にしようと1キロ以上の大量のモツを購入した。あまりにも大量なので半分弱をモツ鍋用にして、残りの半分は後日食べるモツ煮として作っておいた。翌日の方が味も染みて美味しくなっていそうだし。

——
朝、相方がシャワーを浴びて浴室から出てくると「胸が痛い…」と言ってかがみこんでいた。
会社に行くのを遅らせて少し休んでいたのだが、倒れこむほどでもないし、激痛という様子でもなさそう。以前はちょっと具合が悪ければすぐ休んでいたものだけど、この春から社長に就任してからというものめっきり真面目に仕事に行くようになっていて、しかも今日は絶対に休めない会社の行事があるらしく、昼前には起き出して会社へ行った。
そんな感じで会社には行けるくらいだったので、「具合悪そうだな…」くらいにしか思っていなかったのだが。
昼過ぎに、S尾さんから電話があり、相方が具合悪いらしいので会社のIさんに連絡してほしいと電話番号を教えてもらったので、連絡してみる。「具合が悪そうなので、タクシーに乗せて帰らせます。Dさんという人を同乗させていきますので、病院に連れていってあげてください」とのことだった。
1時間ほどすると、相方が普通に玄関を開けて帰ってきた。「タクシーで帰らされたけど、下でDさんが待っていて、病院に入るのを見届けないと帰りません!って言ってるんだよ」と言って、着替えて、また出ていった。
どこの病院に行くのか聞くと、いつも定期健診を受けている徒歩2分ほどの近所の医院に行くそうだ。この医院は、3年ほど前に脳梗塞で急遽入院したT総合病院でしばらく定期健診を受けていたのを、近い方が良かろうと紹介で途中から変更した医院だ。
本当は前回のT総合病院の救急でもいいんじゃないかと思ったけど、見たところ普通に歩いているし喋っているし重症な様子でもないし、前回の経緯も知っている病院だからまあいいか、と送り出した。その医院の午後の診療は14時からなので、ちょうどあと少しで診療開始になる。
それから1時間くらい経った頃、家で仕事をしていると、外から「ピーポーピーポー」と救急車のサイレンが聞こえて、近所で止まった。
もしかして…と思っていると、相方からメールが届いた。
「軽い心筋梗塞でこれからT総合病院へ救急搬送」
しばらくしてから再びサイレンが聞こえて、遠ざかっていった。まさにその救急車に乗っているのか…。
3年前に脳梗塞が発症して病院に連れていきそのまま入院となった時には、初めての経験だったので動揺したものだけど、一度経験していることもあってこの後の流れもなんとなく予想がついていたので、比較的落ち着いていた。
「軽い心筋梗塞」ということは、前回と同じくらいな感じなのかな?だとすれば、恐らくこの後、一旦病状説明で病院に呼ばれて、入院になって後日手術という流れだろう。説明と同意書のサインをしたら、2時間くらいで家に帰れる感じかな。と、その後の予定をなんとなく考える。
とりあえずどうして良いかわからないので、何かしらの連絡を待ちながら仕事を片付ける。
17時半頃、T総合病院から電話がある。「〇〇さんが大動脈解離で、病院に来ていただきたいのですが」とのことで、30分以内には行けることを告げる。
呼び出しはありそうな気はしていたので、外に出られる服装でいた。財布程度の荷物だけカバンに入れて出かける。
前回と同様に2時間くらいで帰れると思っていたので、りつりんに「ちょっとお買い物行ってくるから待っててね」と、買い物程度のお留守番をお願いする感じで出かけた。入院にはなりそうでも連れて帰る必要はなさそうなので、自転車に乗っていった。走っているとパラパラと雨が降ってきて、車で来ればよかったかと思ったけど、後になってみると車でなくて正解だった。
というか、大動脈解離?軽い心筋梗塞ではないのか?

——
慣れたもので、T総合病院の救急科の入り口付近に自転車を停めて、救急科の窓口で相方の名前を告げると中へ通された。前回と同様、部屋の奥のベッドに相方は寝ていた。
前回はこの場で血栓を溶かす薬を投与してもらっていて、発症後すぐだったために処置ができ、後遺症も残らず回復したのだった。また今回もそんな感じなのかな?と少し軽めに考えていたのだけれども。
説明されたところによると、大動脈解離のA型という、緊急手術が必要な状態で、手術が可能な病院を探しているところだという。
看護師が何か所かの病院に電話をかけては、いっぱいで受けてもらえないということで、さらに病院を探している状況が見てとれた。
そんな緊急性の高い状況なのだけど、本人の様子を見るとそれほど痛がっているわけでもなく、笑ったりしながら普通に話もしているので、まだそれほどの大ごとという感覚にはならなかった。
しばらくすると、手術できる病院が見つかったようだ。「独立行政法人 国立病院機構 S病院」という複雑な名前で、看護師さんたちは何度も名称を確認しながら手続きを進めてくれていた。
その後、救急車がやって来たけど、CT画像の容量が重くてCD-ROMにコピーするのに時間がかかっているらしく、救急隊の人たちはあと10分ほど待機することになった。なんだか色々と大変である。
CD-ROMへのコピーが完了したところで、S病院へ搬送されていく。T病院の先生と共に、私も一緒に乗って付いていく。相方が着ていた服や靴などは青いビニール袋に入れて一式渡されたので、それも持っていく。
「連続して2回も救急車に乗るなんて。初めての経験だよー」なんて言って、救急車の中でも相方は見た目だけは元気そうだった。先生ともけっこう会話をした。
「どうして病院を移動するんですか?」
「心臓の手術は心臓外科医が2名以上いないとできないので、体制が整っている病院を探して、この病院になったんです」
「じゃあT病院でも2名以上いれば手術は可能だったんですか?」
「そうですね。今は心臓外科医が一人しかいなかったので対応できなかったけど、揃っている時ならT病院でも手術は可能です」
「先生は、帰りはどうやって帰るんですか?」
「私は帰りも救急車で送ってもらえるので、これに乗って帰ります」
などなど。相方は痛がる様子もなく、そんな感じで世間話をしているうちに20分ほどでS病院に到着した。

——
私は救急処置室の前の廊下の長椅子に座って、しばし待つ。
目の前の処置室からは、小さい女の子が痛さを我慢している様な声が漏れ聞こえてくる。
「大丈夫?少し痛いね、、頑張ってね」という看護師さん?の声も聞こえる。

しばらくすると中に呼ばれて、
担当医の先生が症状と手術の内容を絵に描きながら説明してくれた。
大動脈解離のA型は急いで処置が必要な状態で、これから緊急手術をする。大動脈解離とは、3層になっている血管の内側の膜が破れている状態のこと。相方の状態は、大動脈の心臓に近い上の部分から下にかけて、広範囲に血管の膜が破れているという。
「病院に行ったのが発症から9時間経ってますからね」
「もっと早く病院に行けば良かったんですかね…」
「それだけとも言えないですが」
破れている範囲が広範囲なので一度に全部はできないため、とりあえず緊急性の高い動脈上の部分を人工血管に置き換える「弓部人工血管置換術」を行う予定。残りの下の方は後日また手術を行うかもしれないけど、まずは緊急性の高い箇所の手術を行う。また、以前に心房細動を起こしていると思うので、可能なら左心耳閉鎖術を一緒に行うかもしれないとのこと。
そして手術に伴う合併症のリスクについても説明があった。脳につながる血管も含むため脳梗塞による意識障害や麻痺の可能性、急性腎不全になった場合は血液透析の導入の可能性、術後に出血があった場合は再度開胸手術の必要性、などなど。そして何枚もの同意書にサインをする。いちいち住所まで書かないといけないのが面倒くさい。
ところで私の続柄は内縁の妻になるのだが、前回の入院時にいきなり同意書を書くことになった時、動揺もあって書き慣れない「妻」という漢字が思い出せず、「ひらがなでもいいですよ」と先生に言われて全ての書類に「内縁のつま」と、刺身のつまのようにサインをしたのだった。そんなこともあり、実は今回、T病院に搬送されたことを聞いた時点で、またそんなこともありそうだということで「妻」の漢字を書く練習をしていたのです。その甲斐あって、今回はきちんと漢字で書くことができた!という密かな成長があった私なのでした。
リスクの説明は保険的な意味合いも含むお決まりのものとはいえ、準備のない状態での緊急手術でもあり、リスクはあるのだろう。「このようなリスクはありますが、無いように努めます」と言ってくれたので、信じてお任せするしかない。
この心臓外科の担当の先生は、30代後半〜40代くらいの男性で、ドラマに出てきそうな「できる」医師の落ち着いた凄みのある雰囲気の先生だった。
説明の後、手術前の本人と会う。見た目の様子は普通。
「このまま手術だって」
「夕飯はどうするの?」
「帰るまでご飯はあげられないよ…」
「いや、お前さんのご飯。待ってる間どっかで食べてくればいいじゃん。近くに何かあるんじゃないの?」
「私のご飯は適当にどうにかするけどさ…」
なぜこんな時にまずご飯の心配なのか。
「りつりん、家にお留守番させっぱなしだよ」と言うと、「一回帰って、また来ればいいじゃん」と相方。そして近くにいた看護師さんに「手術って、2〜3時間くらいですかね」と聞いている。
「いやいや。7〜8時間くらいかかりますよ」
「えー!そんなに?!」と思わず同時に声が出てしまった。この期に及んで、私も相方も、まだどこか軽めの手術である気がしていたのだ。7〜8時間って、もしかして大手術なんじゃないの?!
そんなにかかるのであれば、一度家に帰って、りつりんにご飯をあげたい。
「一回帰って、また来てもいいですか?」と言うと、「手術が終わるまでは病院で待機してください」と言われてしまった。
「この後20時12分から手術に入るので、最後に言っておきたいことなどあれば」と看護師さんに言われる。
「何かあるなあ。遺言とか?」とふざけて言って笑っていると、看護師さんは「いや。でも、手術後に話せなくなってしまうこともあるので、預金の暗証番号を伝えている方もいますね」なんてことを言う。
「えー。暗証番号…」と、いきなり思い返そうとする相方だったが、「ああ、でも今はそんなことよりも落ち着いて手術を受けることの方が大事なので」と言われたので、通帳のことは一旦忘れて落ち着いてもらうことにする。
こんな合間にも、入院手続きのことや必要な用品についての説明をされる。よくわからないけど「救急科の受付で手続きして。あとこれはコンビニで買って黄色いカードをもらってください」などなど言われ、受付へ行った。「あと5分で手術が始まります」とも言われたので、今すぐこの手続きをやる必要があるのかと思いつつも受付をすませ、戻ってきた時にはすでに手術室へ運ばれていった後だった。

——
再び私は救急処置室の前の廊下の長椅子に座って、しばし待つ。ドラマだとずっとこの長椅子に座って深刻な顔で待つイメージだけど。ICUの中にある家族待合室に案内されて、そこで待つように言われた。テーブルもあって4畳半くらいの広くて明るい待合室だった。各所に連絡を取りまくって電池が切れそうになっていた携帯の充電もできた。充電器は入院になるかと思って気を利かせて持ってきていたのだが、まさか自分で使うことになるとは。しかも相方の携帯には合わない型のコンセントを持ってきてしまったおかげで自分の充電ができたので、結果的にグッジョブである。

——
この待合室に来てまず、男性の看護師さんから色々な説明を受ける。入院にあたって必要な物とか、レンタルの寝間着セットの申し込みとか。
退院支援の話では、退院後は自宅が想定だけど、後遺症によって認知機能が低下した場合などには施設入所の支援もあります、なんて話も出てきて、そうか…。そんなこともありえるくらいなんだよね…と、事の重大さにだんだん気がついてくる。
手術は7〜8時間かかって、その後少し対応があるので、帰れるのは夜が明けて日が昇ってからになるのは確実です、と言われる。
そして、首からかける紐付きのPHSを渡された。手術中に何かあった時に判断してもらう必要があるので、病院内での移動は良いけれど必ずPHSを持って、鳴ったらすぐに出るように。病院から出ると電波が届かなくなるので外には出ないように、とのことだった。
手術中の緊急判断をするって…こわいよ。このPHSが鳴らないことを祈る。
ところで、説明をしてくれた看護師さんは30歳くらいと若く、ガラケーを使ったことがない世代かもしれない。そのせいか「このボタンを押して電話に出てください」などと、丁寧にPHSの使い方を説明してくれた。

——
一通り説明を受け終わったのが21時頃。終わるのは明け方頃とのことで、まだまだ先は長い。こんなに長くいなければいけなくなるとは想定外だった。というか、家に置いてきたりつりんをどうしよう!夜中に一人にしたことはないので、心配すぎる。でもどうしようもない!
とりあえずICUを出て、病院を探索してみる。1階にあるコンビニで入院セットも買わなきゃいけないし。
夜中で入院病棟も消灯時間を過ぎているので院内には人がほとんど歩いておらず、静かだった。ずっと説明やら何やらでバタバタしていたけど、ようやくまとまった時間ができたので、本人のお姉さんや会社の人に電話をして連絡を取る。まだ手術に入ったばかりでどうなるかも不明な状態なので、心配させるばかりの連絡になってしまったけど。
コンビニは24時間開いているようだった。入院セットのほか、自分の夕食にサンドイッチを買って、コンビニに併設されたイートインコーナーで食べる。お腹は空いているけどあまり食欲もなく。
ちなみにICUでは待合室でも飲食禁止でトイレもなく、入る時はインターホンで呼び出して開けてもらう必要があるのでちょっと面倒だった。
病院は広くて、戻る時のエレベーターの場所がわからなくなりウロウロしてしまった。
病院内を探索したり用事を済ませたりして時間を潰して待合室に戻ってきても、22時過ぎくらい。まだまだ先が長すぎる!

——
そんな時、昼に連絡をくれたS尾さんの奥さんであるSカさんが心配してLINEをくれていたので、現状を伝えてやりとりする。何よりも家に置いてきたりつりんが心配だと伝えると、真夜中にもかかわらず「今すぐにでも駆けつけられます!」と言ってくれた。
鍵は秘密の場所に置いてあるので家に入る方法はあると伝えると、なんと今から行ってくれるという。本当に申し訳ないと思いつつ、りつりんのことを考えるとお願いできるならばお願いしたい。
そもそもりつりんは、S尾家の雄雌ワンコの息子なのだ。
向かってくれている間に、鍵を開ける方法の説明を書いて送っておく。
そんなやり取りをしてから1時間ほど経った、日付が変わる直前の頃、LINEに連絡があり、りつりんの写真と共に「りつりん確保!」というメッセージが送られてきた。
急いで出てきたせいか、窓も開けたままだったらしい…。朝にあげて残していたご飯はそのまま食べていなかった。りつりんは、寂しいとご飯を食べないのだ。
そういえば、普段、休日や相方が会社を休む日はりつりんが「遊んでもらえる!」という雰囲気を察して興奮気味に相方に遊べ、散歩に連れていけ、おやつくれ、と要求して前足でパンチしまくるのだが。今日はなぜか、家にいる相方に対して全くそんなことをせず、りつりんまで元気がない様子で寄り添って寝ていたのだった。具合の悪い雰囲気を感じていたのだろうか。不思議だ。
ともかく、りつりんはS尾家へ連れていってもらえたので、心配事が一つ減って少しは気が楽になった。真夜中にもかかわらず駆けつけてくれたSカさんとAちゃんには本当に感謝です。

——
というところで、まだ0時。まだまだ先は長いのだけど、日付が変わったので本日のブログはここまで。
記録として書いておこうと思ったけど、ものすごく長くなってしまったな。

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